探究科:夏休みフィールドスタディー紹介

2024.09.18

探究科:夏休みフィールドスタディー紹介

 

 本校では高等部3年間における探究プログラムを「SGC(SOIS Global Citizenship)プログラム」と呼称し、個人の興味関心に応じた探究活動を日々の授業を通して実現しています。高等部2年生が全員履修する「フィールドスタディ&リサーチデザイン」の授業では、高等部1年次に「知の探究」にて身につけた研究手法をもとに、8のグループに分かれて自分の興味関心に合わせた探究活動を行なっていきます。

 

 それぞれのグループでは、この夏休みをかけ、様々な場所に現地踏査に行ってきました。オーストラリアで国際交流を極めたチームもあれば、東京で様々な企業を回ったチーム、また芸術大学で舞台について学んだチームなど、千里国際ならではの多種多様な経験を通し、生徒たちはひとりひとりの「リサーチクエスチョン」を考えていきました。以下、今年度の内容をそれぞれ御紹介いたします。

 

◎「地域創生と演劇」

 7月の2日間をかけ、南大阪と京都にて舞台芸術について学びました。南大阪では地域活性化のために演劇の塾を展開している企業の方のお話を聞き、実際にワークショップを体験しました。また近畿大学文芸学部を訪問させていただき、舞台芸術の授業に参加しました。京都では京都大学劇団ケッペキの皆様のご協力のもとでワークショップを体験したり、アングラ演劇の聖地である京大西部講堂を見学しました。また京都芸術大学を訪問させていただき、教授の皆様方より直接脚本の添削を受けることができました。

 

◎「Disaster Management 生きて帰るために」

 7月8日~11日まで72時間サバイバルインストラクターコースを受講し、コーチングについて、また被災した際に起こることのシミュレーションをしつつ防災・減災について学びました。講義と実技をみっちりと受講し無事全員インストラクターの資格を得ることができました。10月には得た知識とスキルを使って中学生を対象として防災・減災サバイバルデイキャンプを企画し実施する予定です。

 

◎「総合知」

 7月6日、4月に鑑賞したハンセン病療養所に関する映画「かづゑ的」の舞台である長島愛生園へ。日生からフェリーで本土と長島をつないだ「人間回復の橋」の下を通り現地到着。入所者自治会長の方に迎えられ、学芸員の方より、施設の歴史などの解説を受け各地をまわりました。「人間回復の橋」開通式のビデオに宮崎かづゑさんが映っているのを見つけた生徒が皆小声で「かづゑさんだ!」と囁き合っていたのが印象的でした。会長の仰った「実母の生前、『会いに行こうか』とたずねると『垂れた顔や曲がった指が治ってないなら帰ってくるな』と言われました」という話に、その残酷さについて生徒がそれぞれ話し合っていました。差別のため勉学したくともできなかった人たちがいるという事実を深く認識し、今後自らの研究や勉学に取り組む姿勢の礎を築いた日になりました。

 

◎「理数探究 We are KWANSEI」

 春学期のFS「理数探究」の一環で、関西学院大学三田キャンパス(理系専用キャンパス)に5日間訪問させて頂きました。なかでも巳波研究室にてお世話になった生徒は、CNNを用いた画像分析プログラムを、巳波教授や大学院生の方々の手助けのもとで作成し、充実した時間を過ごしました。他の研究室でも、微生物の観察、大学院生との交流など充実した時を過ごしたそうです。5日間ありがとうございました。

 東京ツアーで見学したパナソニックセンターでは最先端技術を目の当たりにし、多角的な視点から新しい技術を生み出していることを知ることが出来ました。また、数学体験館では数学を視覚的に表現している展示物が多く、数学の面白さや意外な使われ方していることを知ることができました。

 

◎「Student Agency」(本年度新設)

 Student Agencyのグループは、関東にて7月8〜10日の日程で教育に関わりのある企業や現地の高校生たちとの交流をメインにしたFSツアーを行いました。企業への訪問では、時折先方からの質問に圧倒されそうになりながらも、限られた時間の中で中身の濃い質疑応答が行われました。全員が集中して臨んでいる様子が窺え、心地よい緊張感がありました。新渡戸文化学園と公文国際学園の高校生たちとの交流では、お互いをリスペクトしながら活発なディスカッションが至る所で行われていました。様々な人たちと交流することで、自身の視野を広げたり、テーマを深めたりするための充実した時間となりました。

 

◎「Art & Psychology」

 「Art & Psychology」は、Field Study Tourを東・西の2期に分けて実施しました。東の7/8(月)-10(水)では、関西学院大学東京丸の内キャンパス・コンバースジャパン取締役・東京藝術大学・LVMH・Miss Dior Exhibition・Patagonia鎌倉サーキュラリティーセンター・東京藝術大学大学院の方々との交流をとおして、各々14人異なるResearch Questionと個人Field Studyの精査を行いました。西の7/12(金)では、日帰りで関西学院大学上ヶ原キャンパスの図書館に出向いてリサーチをすすめ、午後は引き続き論文を探したり、文学部の教授へインタビューしたり、大阪の企業訪問を行なったりと、残りの夏期休暇や秋学期のResearch Designに向けて、より主体的に探究をすすめる一歩となりました。 

 

◎「小説・漫画を学問する」

 漫画文学グループでは、6月には関西学院大学図書館にて興味を深め、夏休みに入る前にある程度各自のテーマとRQを決定し、夏休みの大学訪問に向け研究概要と質問事項をまとめました。その上で京都精華大学の漫画文学教授レイチェル・ソーン先生と富山大学の文学教授西田谷洋先生を訪問し、講義を受けるとともにそれぞれの研究に対する質疑をし、研究のヒントを得ました。本グループでは夏の間に「研究プランニングシート」を一度提出させ軌道修正を行った上で、夏終わりの提出に向かいます。秋学期は、そのレポートを礎に、本格的な研究が始まります。

 

◎「Make a difference」(本年度新設)

 Make a difference のグループではSee the evidence of innovationをテーマに8日間の日程で西オーストラリア州パースで現地踏査を実施しました。教育機関(ハイスクール3校、2大学)、行政機関(City of Rockingham)、公共施設(Western Australian Museum, Art Gallery of Western Australia, State Library, Yagan Square)、公共交通機関、商業施設の訪問を通して各自がInnovationの実例を集めました。また様々な場面で感じ取った日本との違いや共通点も、価値のある定性的データとして拾い上げました。今回の現地踏査で学んだことや体験はそれぞれのリサーチに活用されていきます。

 

(生徒の感想文より一部抜粋)

・映画や「麦ばあの島」である程度の知識を得ていたつもりでしたが、実際に歴史館の展示物や収容所の中を見たり、学芸員さんのお話を聞いたりして、自分には想像すらできないような強い差別や支配に驚愕しました。また、そんな劣悪な環境の中でも生きることを諦めず、文学や音楽などに励んだ患者の方々の強さには感動しました。特に、失明し指先の感覚が麻痺しても舌を使って読書をしたという話を聞いて、何不自由なく本を読めている今の環境に感謝しなければならないと強く思いました。(総合知)

・私が学んだことは、交流、質問することの大事さです。3日間全てのアクティビティに関わることなんですが、質問することで新たな別の視点からの意見を聞けて刺激になり、また交流をすることで、深められる事がありました。このことから、自分の研究において個人で考えるのも大切ですが、他人にアイデアをもらいながら研究することを大切にしていこうと学びました。(Student Agency)

・これまでのFSで身についたスキルとしては、質問する力、社会的スキルです。今回のFSではいろんな企業の方々とお話をし、質問させていただく機会がありました。そのような貴重な機会をいただいている分より自分が知りたいことや有益な情報を少しでも具体的に詳しく知るためにより良い質問ができるよう努力しました。また社会的スキルに関しては、企業さんや教授などに今まで連絡をするという機会がなかったため失礼の無い様に正しくメールを送る方法を学びました。夏の過ごし方としては、関西のファッションに関する展覧会などにいったり、今回関学で借りることができなかった本を実際に借りるなどして研究を進めていこうと思っています。(Art&Psychology)

・論文を書くにあたって自分が何からはじめればいいのか、どのような参考資料を使えばいいのか、自分の研究対象でちゃんとした論文が作れるのかとたくさんの不安を抱えていましたが、質問をすることによって自分が何をすべきで客観的に書くにはちゃんとした根拠があれば論文として成り立つということを理解できました。また、自分の質問一つ一つに対して先生が答えを返してくださったのでしっかり昇華してレベルアップさせます。(小説・漫画を学問する)